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南圃通信2   H20.7.17

1.文房具の王様『硯』

  書道に使う用具4つを『文房四宝』と言う。

  1 硯

  2 墨

  3 筆

  4 紙

  である。その中で、なんと言っても王様は『硯』である。実用硯であると共に芸術硯である。特に『端渓』が最高のものとされている。よく墨がおりるし、『眼』と言って美しい紋様や黒味がっかた赭の肌色の美しさは深さを持った絶品である。硯専門に名硯を何百何千万も出して蒐集している人がいるほどである、

  それで、愚息明彦が文化部へ入ると決めた時、丁度『端渓の旅』があったので、強引に誘って連れて行った。彼がどう感じたかわからぬが、次の理由からである。

2.墨色のよい師の作品

  話は、竹陵師のことになるが、なぜ師の『書』作品の墨色がよいのであろう。いろいろ研究してみた。ところが師の墨は、失礼ながらクロなものがない、戦中戦後すぐの時代で『端渓』など一硯もない。

  それなのに、なぜ墨色が冴えているのか!硯を必ずご自分で大根の尻っぽなどで丹念に洗っておられたからである。どんな駄硯でも硯の岡(平らな所)を洗っておくと鋒(硯の細かい目のこと)が立っているので、墨がよくおりるのである。それでもダメな時は『名倉』と言う砥石で岡を磨いてやると鋒が立って、墨がよく磨かれるようになる。これを師はやっておられたから、駄硯で見事な墨色が出たのである。

3.硯も生きている

  『箴言』に『ずぼらは向上の敵』とあるが、硯の手入れも、そのことが適用される。『物は生きている』とも言う。犬や馬、猫でも手入れをしてやると、美しくいきいきとしてくる。『硯』も生きているのである。愛撫し、きれいにしてやると、生々としてその真価を発揮してくれるのである。『物は​これを生かす人に集まる』とはこのことである。

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